BIMを使うと決まったとき、必ずどこかで持ち上がるのが「どこまで細かく作るのか」という話です。細かく作るほど良いモデルになりそうに思えますが、実際には作り込みすぎたモデルほど手間を食い、それでいて後の工程では誰も使わない、ということが起こります。この「どこまで作るか」を関係者の共通の物差しにしたものが、LOD(詳細度)です。この記事では、LODという言葉が実際に指しているもの、100から500までの段階の意味、建築分野と土木分野での扱いの違い、そして現場でどう決めればよいのかを、国土交通省などの公表資料をもとに整理します。
LOD(BIMの詳細度)とは
国土交通省の建築BIM推進会議がまとめたガイドライン第3版では、詳細度を「BIMモデルの作成及び活用の目的に応じた、BIMモデルを構成するオブジェクト(部品)の形状情報及び属性情報の詳細さの度合い」と定義しています。ここで大事なのは「目的に応じた」という一言です。詳細度は絶対的な優劣の順位ではなく、その場面で必要な情報量を示すための目盛りにすぎません。
ややこしいのは、LODという略語がひとつの意味に定まっていない点です。同ガイドラインは、LOD(Level of detail)を形状情報(ジオメトリ)の詳細度を表す指標、LOI(Level of Information)を属性情報の詳細度を表す指標とし、これとは別にLOD(Level of development)を形状情報と属性情報を統合したBIMオブジェクト全体としての開発・発展度合いを表す指標だと説明しています。つまり同じ「LOD」でも、形の細かさの話をしているのか、検討がどこまで進んだかの話をしているのかで、中身が変わります。
- LOD(Level of Detail):形の細かさ。柱を四角い箱で表すか、ボルトまで表すか
- LOI(Level of Information):属性情報の充実度。名称、寸法、材質、メーカー、施工年などをどこまで持たせるか
- LOD(Level of Development):形状と属性を合わせて、その部材の検討がどこまで進んだかを示す
- LOIN(Level of Information Need):ISO 19650で示された、その目的に必要十分な情報の水準
打ち合わせで「LOD300でお願いします」と言われたら、形だけの話なのか、属性情報まで含む話なのかを確認してください。国土交通省のBIM/CIM取扱要領は、本要領における詳細度は形状の詳細度(LoD)を指すと明記しています。前提を揃えずに数字だけをやり取りすると、渡した側と受け取った側で期待値がずれます。
詳細度100〜500が示すもの
土木分野では、国土交通省の「BIM/CIM取扱要領」(令和8年3月)が、詳細度を100、200、300、400、500の5段階と定めています。RC橋脚を例にした共通の定義は次のとおりです。この定義は、社会基盤情報標準化委員会 特別委員会がまとめた「土木分野におけるモデル詳細度標準(案)【改訂版】」(平成30年3月)を出典としています。
- 詳細度100:対象を記号や線、単純な形状でその位置を示したモデル
- 詳細度200:対象の構造形式が分かる程度のモデル。標準横断で切土・盛土を表現する程度の表現
- 詳細度300:附帯工等の細部構造、接続部構造を除き、対象の外形形状を正確に表現したモデル
- 詳細度400:詳細度300に加えて、附帯工、接続構造などの細部構造及び配筋も含めて、正確に表現したモデル
- 詳細度500:対象の現実の形状を表現したモデル
並べてみると、数字が上がるほど「見た目がきれいになる」のではなく、「その形を根拠に判断してよい範囲が広がる」ことが分かります。詳細度200なら構造形式の説明はできても寸法を拾う根拠にはなりません。詳細度300になって初めて外形が正確になり、干渉の確認に耐えるようになります。詳細度400では配筋まで含むため、施工の検討や数量の把握に踏み込めます。なお同要領では、地質・土質モデルに対しては詳細度を適用しないとされています。
測量・地質土質調査から詳細設計までの段階で、3次元モデルの詳細度の目安とされている水準
200〜300
国土交通省「BIM/CIM取扱要領」令和8年3月
建築分野でのLODの使われ方
建築分野では、土木のように国が一律の数値表を定めているわけではありません。建築BIM推進会議のガイドライン第3版は、国内外の指標には数字による指標(国際的に多用)と、図と言葉による指標(国内で多用)があるとし、両方を代表例として並べています。数字のほうがLOD・LOIで、図と言葉のほうが日本建設業連合会の「設計BIMモデル作成ガイド」や建築設計三会の「設計BIMワークフローガイドライン」の指標にあたります。
同ガイドラインが階段を例に示した数字の指標では、LOD200が基本的な配置と数の検討で、階段の踊り場と信頼できる数・配置を概略的な形状で表現する段階。LOD300が主要な構成要素と基本的な寸法の検討で、蹴上と踏面の数や手すりを含む段階。LOD350が他の建築要素との接続や取り合い部分、施工計画に必要な情報の検討で、手すりのサポート位置やブラケット等の二次的な要素まで反映する段階。LOD400が実際の製作・施工に必要な詳細情報を含み、接合部や固定方法まで反映する段階、と整理されています。
そして、どの指標を使うかを決める場所も示されています。同ガイドラインは「いつ誰がどこまで何を入力するのか」を、どのような指標で管理するかについて、発注者がEIRにおいて定義するか、あるいは受注者と発注者が協議しBEPにおいて定義することが重要だとしています。詳細度は、モデルを作り始めてから決めるものではなく、BIM実行計画(BEP)の段階で先に取り決めておく項目だ、ということです。あわせて、部材ごとの担当と詳細度を一覧にした「設計責任分担表」をBEPに添付しておくと、合意と進捗管理がしやすくなるとも述べられています。
国際的な指標としてのLOD
数字によるLODの元をたどると、米国で整備されたLOD Specificationに行き着きます。最新版であるBIMForum Globalの「2025 LOD Specification」は、LODを部材(モデル要素)の数量・寸法・形状・位置・向きという5つの幾何特性で定義しています。3次元モデルは見た目の上ではどれも精密に見えてしまうが、精密であることと正確であることは別だ、という考え方が根底にあります。
同仕様では、設計と製作の間を埋める水準としてLOD350(他職種との取り合い調整に用いる段階)が定着しており、2025年版では新たにLOD250が追加されました。これはLOD200(おおよその形状)とLOD300(正確な形状)の間にある溝を埋めるもので、±2インチといった許容差を明示することで、概略よりは信頼できるが製作の意図までは含まない、という状態を伝えられるようにした水準です。既存建物のレーザースキャンから起こしたモデルなど、壁の片面しか実測できていない場合に無理にLOD300と称さずに済む、という実務上の割り切りが背景にあります。
BIMForum Globalの2025年版は、推奨ルールの筆頭に「LODはモデル全体のものではなく、モデル内の要素にのみ適用される」を挙げ、契約書に「LOD300のモデルを納品する」と書くことを推奨しないとしています。また「LODは工程段階と一致しない」とも明記しています。ひとつのモデルの中に、高い部材と低い部材が混在しているのが普通の姿だという整理です。
建設現場でLODが効いてくる場面
詳細度は書類上の用語に見えますが、実際に差が出るのは現場です。次のような場面で、決めてあるかどうかがそのまま手間の差になります。
- 干渉チェック:外形が正確な水準(詳細度300相当)に達していない部材を混ぜると、当たっていないものを当たっていると誤認する
- 施工図・製作図:接合部や取り合いまで表現された水準がなければ、設計モデルをそのまま施工側で使うことはできない
- 積算・数量拾い:形状だけでなく属性情報がどこまで入っているかで、モデルから数量を出せるかどうかが決まる
- 施工計画の検討:仮設や重機の検討に使うなら、対象の周辺だけ詳細度を上げるという判断が要る
- 確認申請:申請での利用は目的が異なるため、他の用途と同じ水準で考えない
- 維持管理への引き渡し:竣工後に使う情報を誰がいつ入れるかを決めておかないと、引き渡し直前に負荷が集中する
BIM導入済の部署で「手戻りや調整の減少によりプロジェクトが円滑に進むようになった」と回答した割合(令和6年度)。令和4年度の21.1%から上昇
26.4%
国土交通省「建築分野におけるBIMの活用・普及状況の実態調査」令和7年1月調べ
こうした場面の整理は、結局のところ施工管理の段取りそのものです。国土交通省の実態調査では、BIMの効果を実感できる場面として「手戻りや調整の減少によりプロジェクトが円滑に進むようになった」を挙げた割合が令和6年度で26.4%となり、令和4年度の21.1%から5ポイント以上増えた唯一の項目として挙げられています。モデルを作ること自体ではなく、後工程で使えるかたちで作ることが効果につながっている、と読み取ることもできます。
詳細度を決めるときの注意点
建築BIM推進会議のガイドライン第3版は、目的なしに全ての情報を3Dモデル化し、属性情報を与え、形状と情報の詳細度をできる限り高めておくという考えは、データ連携を行う上でもよくない状況にあると指摘しています。そのうえで、受け渡しても使われないデータを今までの倍以上の時間をかけて作り上げ、結果として誰にもメリットがない、ということになりかねないと述べています。
BIMのメリットが得られていないと感じる場面として「CAD等の業務に加えてBIMを活用しており、二重作業になるなど時間・手間が増加している」を挙げた割合(令和6年度・最多)
55.1%
国土交通省「建築分野におけるBIMの活用・普及状況の実態調査」令和7年1月調べ
同じ調査で、メリットが得られていないと感じる場面の最多は「現在のCAD等の業務に加えてBIMを活用しており、結果として二重作業になるなど、作業にかかる時間・手間が増加している」で55.1%でした。作る量を増やせば効果が出るわけではない、という現実がここに表れています。詳細度を決める作業は、作らない範囲を決める作業でもあると考えるほうが実態に近いはずです。
国土交通省のBIM/CIM取扱要領は、3次元モデルの詳細度や属性情報は作成範囲全体で統一する必要はなく、目的に応じて作成範囲や構造・部材ごとに調整することが重要だとしています。さらに、各要素の詳細度は受発注者間で協議して必要最低限を設定し、その協議結果を一覧表として記録して「3次元モデル作成引継書シート」などを通じて後段階に引き継ぐこととされています。決めるだけでなく、決めた結果を残して渡すところまでが一続きです。
もうひとつ押さえておきたいのが、詳細度を上げると付いてくる責任です。同要領では、今後は詳細度300以上で3次元モデルを作成する場合、土木の主要構造物について3次元モデルと2次元図面の整合を確認していくこととされています。詳細度を上げるという判断は、確認作業や責任の範囲を広げる判断でもある、ということです。安易に高い数字を書き込む前に、その水準で何を判断したいのかを言葉にしておくことをおすすめします。
詳細度の決め方
- 1
モデルを何に使うか書き出す
施主への説明、干渉チェック、施工図への流用、数量拾い、維持管理への引き渡し。用途を具体的に並べます。ここが「生産性向上のため」といった一般論のままだと、この先の判断がすべてぶれます。
- 2
用途ごとに必要な水準を当てる
説明用なら外形が分かる程度で足り、干渉チェックなら外形が正確な水準、施工検討なら細部構造まで、と用途から逆算します。土木案件であれば、国土交通省が示す200〜300の目安が出発点になります。
- 3
部材ごとに割り当てて、作らない範囲を決める
全体を一律にせず、鉄骨、外装、内装、設備といった単位で水準を振り分けます。同時に、モデル化しない部材も明記します。決めていない範囲があると、担当者の判断で作り込まれ、工数だけが増えます。
- 4
形状と属性情報を分けて考える
形は簡単でよいが型番と数量は必要、という組み合わせは珍しくありません。属性情報は表計算ソフトで管理したほうが早い場面もあります。3Dで持つべき情報かどうかを、そのつど見極めます。
- 5
取り決めを文書にして合意し、次の段階へ引き継ぐ
決めた内容はBEPや責任分担表、引継書シートといった形で残し、発注者や協力会社と合意します。段階が進んで前提が変わったときは、その都度更新します。口頭の取り決めは、担当者が代わった時点で消えます。
最初から完璧な表をつくる必要はありません。1件の案件で、主要な部材を10行ほど並べ、用途と水準と担当をA4一枚に書いてみるところからで十分です。書いてみると、社内で決まっていなかったことがはっきりします。BIMを含めた社内のデータの流れを整理したい場合は、AI番頭のサービス内容をご覧いただくか、無料診断・お問い合わせからご相談ください。どの業務からデジタル化すると効果が出やすいかを、一緒に整理します。
よくある質問
QLODとLOIの違いは何ですか?+
LOD(Level of Detail)は形状情報の詳細さ、LOI(Level of Information)は属性情報の詳細さを示す指標です。建築BIM推進会議のガイドライン第3版はこの二つを分けて定義しており、両者を統合してBIMオブジェクト全体の開発・発展度合いを示す指標としてLOD(Level of Development)があると説明しています。形は簡単でも属性情報は充実している、という組み合わせも成り立ちます。
Q「詳細度300のモデル」という言い方は正しいですか?+
あまり正確な言い方ではありません。BIMForum Globalの2025年版LOD Specificationは、LODはモデル全体ではなくモデル内の要素にのみ適用されるとし、契約書などで「LOD◯◯◯のモデルを納品する」と書くことを推奨していません。国土交通省のBIM/CIM取扱要領も、詳細度は作成範囲全体で統一する必要はなく、構造・部材ごとに調整することが重要だとしています。部材単位で示すのが本来の使い方です。
Q詳細度は誰が決めるのですか?+
発注者と受注者の協議で決めます。建築分野では、発注者がEIR(発注者情報要件)で定義するか、受発注者が協議してBEP(BIM実行計画書)で定義することが重要だとされています。土木分野の直轄事業では、モデル内の各要素の詳細度を受発注者間で協議し、必要最低限を設定して協議結果を一覧表として記録することとされています。いずれも、着手前に決めておく事項です。
QLOD350やLOD250は日本でも使いますか?+
使われる場面はありますが、国内の公的な基準に数値として定められているわけではありません。建築BIM推進会議のガイドライン第3版は、数字による指標の例としてLOD200・300・350・400を階段の例で示しており、LOD350は他の建築要素との取り合いや施工計画に必要な情報を検討する段階と説明されています。LOD250はBIMForum Globalの2025年版で新設された任意の水準で、国内での位置づけはこれからです。
Q小規模な工事でも詳細度を決める意味はありますか?+
あります。規模が小さいほど、作りすぎたモデルにかけた時間がそのまま損失になります。関係者が数社の案件であれば、主要な部材について「どこまで作るか」「何は作らないか」を一枚にまとめるだけでも十分に機能します。大事なのは表の厚みではなく、関係者が同じ理解を持っていることです。
関連用語
BIM/CIM とは
建物やインフラの情報を3次元データで扱う仕組み。詳細度はそのモデルの作り込み方を示す物差しです。
詳しく見る →BIM実行計画(BEP) とは
BIMの目的・体制・詳細度・受け渡し方を決めて合意する計画書。詳細度を書き込む場所がここです。
詳しく見る →積算 とは
工事の数量と費用を算出する仕事。モデルから数量を拾えるかどうかは詳細度と属性情報で決まります。
詳しく見る →出典・参考
国土交通省 大臣官房参事官(イノベーション)グループ「BIM/CIM取扱要領」令和8年3月
https://www.mlit.go.jp/tec/content/001990087.pdf
出典を開く →国土交通省 建築BIM推進会議「建築分野におけるBIMの標準ワークフローとその活用方策に関するガイドライン(第3版)」令和8年3月
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/content/002012930.pdf
出典を開く →社会基盤情報標準化委員会 特別委員会「土木分野におけるモデル詳細度標準(案)【改訂版】」平成30年3月
https://www.jacic.or.jp/hyojun/files/modelsyosaido_kaitei1.pdf
出典を開く →BIMForum Global「2025 Level of Development (LOD) Specification」2025年12月
https://bimforum.global/wp-content/uploads/dae-uploads/BIMForum-Global_2025_LOD_ENG_2025-12-26_final.pdf
出典を開く →国土交通省「建築分野におけるBIMの活用・普及状況の実態調査<概要>」令和7年1月調べ
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/content/001882625.pdf
出典を開く →