職人さんへの連絡は個人のLINE、図面はメール、日報は紙。急ぎの用件は結局電話になり、誰が見たのかは分からない。中小の建設会社でよく聞く景色です。この行き来を会社の道具として一本化する選択肢が、LINE WORKS(ラインワークス)です。使い勝手はほぼLINEのまま、記録と管理だけが会社側に残ります。この記事では、LINE WORKSとは何なのか、個人のLINEと何が違うのか、料金の目安、建設現場での具体的な使いどころ、実際に導入した建設会社の運用、そして入れる前に知っておきたい落とし穴までを順にご説明します。
LINE WORKSとは
LINE WORKSとは、LINEとほぼ同じ操作感で使える法人向けのビジネスチャットです。LINE WORKS株式会社が提供しており、トークに加えて掲示板、カレンダー、アドレス帳、アンケート、タスク、上位プランではメールやDrive(ファイル共有)までを一つのアプリにまとめています。公式サイトでは導入社数52万社(2026年1月時点)と示され、富士キメラ総研の調査をもとに2024年度の有料ビジネスチャット市場でシェア1位とされています。
LINE WORKSの導入社数(2026年1月時点)。有料ビジネスチャットのシェアは富士キメラ総研「ソフトウェアビジネス新市場2025年版」で2024年度1位とされている
52万社
LINE WORKS 公式サイト
建設業でとくに効いてくるのは、新しい使い方を覚えなくていいという一点です。現場の職長や職人さんに新しいアプリの研修をするのは、実際にはかなり骨が折れます。LINE WORKSはトーク画面もスタンプも既読の見え方もLINEとほぼ同じなので、配った初日から普通に使える人が多い。ここが他のビジネスチャットとの分かれ目になります。
個人のLINEで業務連絡をすると、やり取りの中身は社員個人のスマートフォンに残ります。退職しても手元に残り、会社が消すよう求めれば私的な領域への立ち入りという別の問題が生まれます。LINE WORKSは会社が発行するアカウントなので、退職時にアカウントを止めればその人の閲覧は終わります。管理者が誰にどの機能を使わせるかを決められ、トークの記録を会社の側に残すこともできます。連絡の速さはそのままに、持ち主だけを個人から会社へ移す道具だと考えると近いです。
LINE WORKSでできること
トークだけの道具ではありません。中小の建設会社が使う範囲では、次のあたりを押さえておけば十分です。
- トーク:一対一、グループ、写真・動画・PDFの送受信。既読が分かるので「見たか」を電話で確かめる手間が消える
- ノート・フォルダ:トークルームごとに掲示物とファイルを貯める場所。日報や点検表をテンプレートにして置いておける
- 掲示板(ホーム):全社向けの通達。トークの流れに埋もれさせたくない連絡はこちらに出す
- カレンダー:現場ごと・担当ごとの予定と、重機や車両といった設備の予約
- アンケート:体調報告、安全パトロールの回答、研修の感想などを集めて集計する
- タスク:やることを担当と期限つきで配り、消化状況を追う
- 音声・ビデオ通話:有償プランでは最大200人まで、通話時間の制限なし。遠隔での現場確認や朝礼にも使われる
- メール・Drive:アドバンストプランで利用できる。会社のメールアドレスまでLINE WORKSに寄せたい場合の選択肢
建設業で効くのは「外部トーク連携」
LINE WORKSの最大の特徴は、社外の相手とつながれることです。相手も同じくLINE WORKSを使っている会社であれば会社同士でつなげますし、相手が個人のLINEしか持っていなくても、LINEユーザーのままトークできます。一人親方や小さな協力会社に「うちのアプリを入れてください」と頼まなくて済むのは、現場では大きな差になります。ただし無条件ではなく、管理者画面の[サービス]>[トーク]>[外部ユーザーとのトーク]で、誰に外部連携を許すかを設定しておく必要があります(出典: LINE WORKS ヘルプセンター)。
外部トーク連携は便利な反面、全員に開放すると社外へのファイル送信が野放しになります。実務では、外部とやり取りするのは所長と工務担当だけ、といった形で対象者を絞るのが無難です。あわせて、協力会社とのトークルーム名には工事名を必ず入れる、写真は現場ごとのフォルダに残す、といった置き場所の決めごとを最初に作っておくと、あとから探せる状態を保てます。
LINE WORKSの料金プランと選び方
プランはフリー、スタンダード、アドバンストの三つです。公式サイトの利用料金ページでは、次のように示されています。
- フリー:0円。ユーザーは30名まで、保存容量は合計5GB。ビデオ通話は4人・60分までの制限がある
- スタンダード:年額契約で1ユーザーあたり月450円(月額契約は540円)。人数の上限なし、容量は1TBに1ユーザーあたり1GBが加算、通話は200人まで時間制限なし
- アドバンスト:年額契約で1ユーザーあたり月800円(月額契約は960円)。スタンダードの内容に加えてメールとDriveが使える。容量は100TBに1ユーザーあたり1GBが加算
スタンダードプランを年額契約した場合の1ユーザーあたり料金。20人で使うなら月9,000円、年間で約10.8万円が目安になる
月450円/人
LINE WORKS「利用料金」
フリープランでもトーク、掲示板、カレンダー、アンケートといった基本の機能は使えます。10名前後の会社なら、しばらく無料のまま回してしまう手もあります。有償化を考える節目は三つ。人数が30名に近づいたとき、工事写真で5GBが埋まりそうなとき、そして協力会社を含めた大人数の通話や、細かい管理機能が必要になったときです。逆に言えば、その必要が出るまで急いで契約しなくても構いません。
建設現場でのLINE WORKSの使い方
機能の一覧より、どの場面で何が変わるかのほうが判断しやすいはずです。建設業では2024年4月から時間外労働の罰則付き上限規制が適用され、限られた時間の中で工程を回すことが求められています(出典: 国土交通省「建設業の働き方改革」)。連絡の往復や書類の転記に費やしていた時間を削ることは、その意味でも避けて通れません。よく使われている四つの場面を挙げます。
写真と図面を、その場で共有する
配筋の写真、納まりの相談、変更図の差し替え。現場から事務所へ、あるいは設計者へ、その場で送って返事をもらえます。紙の図面を配り直していた会社では、ここだけで往復の移動が減ります。トークルームのフォルダ機能を使えば、送った写真がトークの流れに埋もれず現場ごとにたまっていくので、あとから「あの時の写真」を探す手間も軽くなります。
日報と出面を、紙からやめる
ノート機能に日報の様式をテンプレートとして置き、職長がその場で埋める形にすると、紙の回収と転記が消えます。木造住宅やリフォームを手がける平林建設では、ノート機能で日報やチェックリストをテンプレート化してペーパーレス化を進め、勤怠管理サービスのKING OF TIMEと連携させたことで打刻漏れが減ったと紹介されています。同社では顧客別のフォルダで写真や図面を整理し、自動翻訳の機能をネパール人社員との意思疎通に使っているという記述もあります(出典: LINE WORKS 導入事例)。
安全連絡と安否確認を、確実に届ける
KY活動の記録、ヒヤリハットの共有、台風や地震のときの安否確認。全員に確実に届く経路を一本持っておくことは、現場を抱える会社では安全管理そのものです。従業員272名を全国の現場に送り出している中村建設では、気象庁のデータをもとに対象エリアの社員へ自動で確認を送る安否確認Botを組み、防災訓練で84%の回答率を得たと公開されています(出典: LINE WORKS 導入事例)。
中村建設の防災訓練における安否確認の回答率。従業員272名を対象に、気象庁データと連動したBotから通知した結果として公開されている
84%
LINE WORKS 導入事例「中村建設株式会社」
協力会社とのやり取りを会社側に置く
外部トーク連携を使えば、協力会社や一人親方とのやり取りも会社のアカウントの中で完結します。担当者が変わっても引き継げますし、担当者の私物スマホに会社の情報が残らない状態を作れます。クラウドに業務データを置くときの考え方は情報漏洩対策の解説でも整理していますので、あわせてご覧ください。
導入した建設会社の運用
岩手県宮古市で1963年に創業した陸中建設は、導入前は電話とメールが中心で、砕石場で働く社員にはパソコンも会社のメールアドレスもなく、全員に同じ情報を届ける手段がなかったといいます。導入後は社内のやり取りの多くがトークに移り、既読が分かるため「読んでいない人にだけ連絡する」形に変わりました。紙で回していた決裁も、写真やPDFを添付して送ることで社長が出張先で処理できるようになり、机の上に書類がたまらなくなったと紹介されています(出典: LINE WORKS 導入事例)。
中村建設の場合は、社内のグループウェアがVPN接続を必要としていて現場の社員がすぐに情報を見られなかったこと、協力会社との連絡が個人のLINEに頼っていてシャドーIT(会社が把握していないIT利用)の懸念があったことが、導入前の課題として挙げられています。カレンダーで全社の予定を一元化して紙の資料をやめ、掲示板で通達やマニュアルを配り、通話機能でリモート朝礼を行うところまで広げた例です。どちらの会社も、まず「届く経路を一本にする」ところから入っているのが共通点です。
LINE WORKS導入の進め方
順番を間違えると「入れたけれど誰も使わない」で終わります。中小規模の会社では、次の順で進めるのが現実的です。
- 1
電話が多い連絡を一つ選ぶ
全部を移そうとせず、いま一番電話が飛び交っている用件を一つ決めます。明日の段取り連絡、資材の手配、写真の送付。どれか一つで構いません。効果が見えやすいところから入るのが定石です。
- 2
フリープランで一つの現場に配る
その用件に関わる人だけにアカウントを配り、一つの現場で二週間ほど回します。この段階では費用はかかりません。うまくいくかどうかは、道具の性能ではなく決めごとの有無で決まります。
- 3
置き場所と呼び方の決めごとを作る
トークルーム名は工事名で始める、図面はフォルダに入れる、日報はノートのテンプレートを使う。この三つを紙一枚にまとめて配ります。決めないまま人数を増やすと、同じ現場のグループが三つできます。
- 4
電話に戻さない
使い始めの一か月は、慣れた人ほど電話に戻ります。管理職が率先してトークで返す、電話で来た用件は「トークに書いてください」と返す。ここを続けられるかどうかが定着の分かれ目です。
- 5
人数と容量を見て有償化を判断する
30名に近づく、写真で容量が詰まる、大人数の通話が要る、管理機能が必要になる。このいずれかが来たらスタンダードを検討します。会社のメールも寄せたいならアドバンストが対象になります。
- 6
外部連携と権限を締める
協力会社とつなぐ段階になったら、外部トーク連携を許す人を絞り、退職者のアカウントを止める手順を決めます。人数が増えてから整理するのは大変なので、広げる前に用意しておくのが安全です。
どの連絡から手を付けるべきか、LINE WORKSで足りるのか施工管理システムまで必要かの見極めは、社内だけでは判断しにくいところです。AI番頭のサービスでは、いまの連絡手段と作業量の洗い出しから一緒に進めています。
メリットと注意点
ビジネスチャットの導入がうまくいかない理由の大半は、機能不足ではなく現場が使ってくれないことです。LINE WORKSは画面がLINEとほぼ同じで、年配の職長でもトークだけならその日から使えます。加えて、相手が個人のLINEのままつながれるので、協力会社に新しいアプリを入れてもらう交渉をせずに輪を広げられます。現場を抱える会社にとって、この二つは他のツールにない強みです。
気軽に作れるぶん、現場ごと・工種ごと・その場の相談ごとにグループが増えていきます。同じ現場の話が三つのルームに散り、あとから探せなくなるのはよくある失敗です。ルーム名の付け方と、残すべき情報はノートや掲示板に移すという決めごとを、人数が増える前に用意してください。
- フリープランは30名・合計5GBまで。工事写真を送り合う使い方だと、容量は思ったより早く埋まる
- メールとDriveはアドバンストプランのみ。フリーやスタンダードで会社のメールまで寄せることはできない
- 外部トーク連携は管理者の設定が前提で、開放する範囲を決めないまま全員に許すと社外への送信を把握できなくなる
- チャットは流れる媒体なので、契約書や図面の正本を置く場所には向かない。保存すべきものは別に置き場所を決める
- 個人のLINEから移す場合、切り替え期間中は両方が動いてしまう。いつからどちらに一本化するかの日付を先に決めておく
- スタンプや既読の気軽さは利点であると同時に、時間外の連絡が増えやすい面もある。夜間や休日の扱いは社内で決めておきたい
AI機能との組み合わせ
2025年11月27日には、LINE WORKS株式会社が生成AIサービス「LINE WORKS AiStudio」の提供を開始しています。発表によれば、専門知識がなくても社内の文書やナレッジを読み込ませて自社向けのAIアシスタントを作れるもので、トーク画面からアシスタントを呼び出し、掲示板やDriveの情報を検索・要約させることができるとされています。回答には根拠となる出典が表示され、利用者が入力した情報は生成AIの学習には使われないと明記されています。基盤にはOpenAIの大規模言語モデルが使われるとの説明です(出典: LINE WORKS株式会社 プレスリリース)。
LINE WORKS AiStudioの料金(年額契約時の1ユーザーあたり)。2025年11月27日に提供開始と発表されている
月950円/人〜
LINE WORKS株式会社 プレスリリース(2025年11月27日)
ただし、AIを足す前にやることがあります。読み込ませる社内文書が紙とファイルサーバーに散らばったままでは、AIは探しようがありません。建設DXの解説でも触れているとおり、連絡と記録をまず一か所に集めるのが先で、AIはその上に載る話です。会議や打ち合わせの記録を楽にしたい場合は文字起こしAIの解説も参考になります。
よくある質問
Q個人のLINEをそのまま業務に使い続けてはいけないのですか?+
法律で禁じられているわけではありません。実務上の弱点は、やり取りが社員個人の端末に残り、退職後も手元に残ってしまう点です。トーク履歴を消すよう求めることは、私的な領域への立ち入りという別の問題になりかねません。取引先の名前や現場の写真、金額のやり取りを個人のアプリに置き続けるかどうかは、会社として一度決めておいたほうがよい論点です。
Q協力会社にもLINE WORKSを入れてもらう必要がありますか?+
必要ありません。外部トーク連携を使えば、相手が個人のLINEのままでもトークできます。相手の会社もLINE WORKSを使っている場合は、双方の管理者がそれぞれの管理画面で連携を許可する設定を行うことで、会社同士としてつながります。いずれの場合も自社側で外部連携を使えるメンバーの設定が要りますので、管理画面での確認が最初の作業になります。
QLINE WORKSと施工管理システムは、どちらを選ぶべきですか?+
役割が違うので、どちらか一方という選び方にはなりにくいです。LINE WORKSは連絡と共有の道具で、日々の言葉のやり取りと写真が主役になります。施工管理システムや業務アプリは、工事台帳、原価、工程といった形の決まったデータを貯めるための道具です。日々の連絡はLINE WORKS、蓄積すべき記録は業務システム、と役割を分けている会社が多く見られます。まず連絡を一本化してから、記録の仕組みを考える順番が現実的です。
Qパソコンが苦手な職人が多くても定着しますか?+
操作の面ではハードルは低いほうです。実際、パソコンも会社のメールアドレスも持たない現場社員に情報を届ける手段としてLINE WORKSを選んだ建設会社の事例が公開されています。ただし定着するかどうかは、操作の易しさより運用で決まります。最初は写真を送る、スタンプで返事をするといった負担の小さい使い方に絞り、電話で来た用件をトークに書き戻す習慣を管理職側が作れるかどうかが分かれ目になります。
Qトークの内容を会社側で確認することはできますか?+
管理者向けにトークの記録を保全する仕組みが用意されており、使える範囲はプランや追加のオプションによって異なります。契約前に、自社が必要とする範囲が対象に含まれるかを確認してください。あわせて考えたいのは、どこまで見るかという社内の方針です。何のために記録を残すのか、誰が見られるのかを社内規程に書いて周知しておかないと、監視されているという受け取られ方をして利用が止まります。
関連用語
情報漏洩対策
業務の連絡やデータをクラウド上に置くときに、最低限おさえておきたい考え方。
詳しく見る →建設DX
建設業で何をどう変えるのかの全体像。道具選びの前に押さえておきたい見取り図。
詳しく見る →文字起こしAI(議事録AI)
打ち合わせや朝礼の記録を自動で文字にする道具。連絡の一本化とあわせて効く。
詳しく見る →どの連絡から手を付ければ現場の負担が減るのか、いまの状況の棚卸しからご相談いただけます。
出典・参考
LINE WORKS「利用料金」
https://line-works.com/pricing/
出典を開く →LINE WORKS「LINEとつながる唯一のビジネスチャット」(導入社数・シェア)
https://line-works.com/line-works/
出典を開く →LINE WORKS 導入事例「中村建設株式会社」
https://line-works.com/cases/nakaken/
出典を開く →LINE WORKS 導入事例「平林建設株式会社」
https://line-works.com/cases/hirabayasi/
出典を開く →LINE WORKS 導入事例「陸中建設株式会社」
https://line-works.com/cases/rikuchu/
出典を開く →LINE WORKS株式会社 プレスリリース「あなたによりそう生成AIプラットフォーム『LINE WORKS AiStudio』提供開始」(2025年11月27日)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000508.000020202.html
出典を開く →LINE WORKS ヘルプセンター「外部ユーザーとトークできる設定になっているか確認する方法はありますか?」
https://help.worksmobile.com/ja/faqs/services/line-works/message/message-with-external-users/how-to-know-if-message-external-users/
出典を開く →国土交通省「建設業の時間外労働の上限規制は2024年4月から! 建設業の働き方改革」
https://daiku-sodateru.mlit.go.jp/data/807e5605b217ca2cd09298d9a4a25c62.pdf
出典を開く →