現場の写真はスマホの中、図面は事務所のキャビネット、協力会社への連絡は電話とLINE、発注書は手書きしてFAX。工事は動いているのに、その記録だけが会社のあちこちに散らばっている。この状態をひとつにまとめる道具として、建設会社でもっともよく名前が挙がるのがANDPAD(アンドパッド)です。この記事では、ANDPADとは何なのか、どんな機能があり何ができるのか、実際の現場ではどう使うのか、料金はどういう考え方で決まるのか、そして導入した会社にどんな変化が起きたのかを、専門用語をかみくだきながら順にご説明します。あわせて、中小の工務店や専門工事会社がつまずきやすい点にも触れます。
ANDPAD(アンドパッド)とは
ANDPADとは、工事にまつわる情報をクラウド上の一か所にまとめ、現場と事務所と協力会社が同じものを見られるようにするサービスです。株式会社アンドパッドが2016年から提供しており、公式サイトでは「現場の効率化から経営改善まで一元管理できるシェアNo.1クラウド型建設プロジェクト管理サービス」と説明されています。写真、図面、工程表、日々の連絡、検査記録、発注や請求といった、これまでバラバラの道具で扱っていたものが、ひとつの案件フォルダの中に並んでいくイメージです。
ANDPADの利用社数とユーザー数。2026年6月16日にアンドパッドが公表した「ANDPAD AWARD 2026 授賞式を開催」の発表資料で示された数字
26.5万社/69万人
ANDPAD ニュース(2026年6月16日)
「施工管理アプリ」と紹介されることが多いのですが、実際に使ってみると、性格としてはアプリというより会社の工事情報を置いておく共通の棚に近いものです。スマホからも、事務所のパソコンからも、同じ棚を開けます。だから現場監督が撮った写真が事務所の画面にすぐ並びますし、事務所が差し替えた最新図面を、現場が古い版と取り違えることも減ります。逆にいえば、棚に入れる約束事を決めないと、散らかった棚がそのままクラウドに移るだけになります。
従来の基幹システムは、事務所の担当者が入力し、現場は結果を受け取るだけ、という形が多くありました。ANDPADは現場の職長や協力会社の社長がスマホで直接書き込む前提でつくられています。入力する人が現場にいるぶん、情報が新しいまま届くのが強みです。反面、現場側が使ってくれなければ、ほとんど価値が出ないという性質もあわせ持ちます。
ANDPADでできること(主な機能)
ANDPADは一枚岩の大きなソフトではなく、目的ごとに分かれた製品の集まりです。公式サイトでは施工管理、チャット、図面、黒板、検査といった現場向けのものから、引合粗利管理、受発注、請求管理、ANDPAD Analyticsといった経営向けのものまで、遠隔臨場や資料承認、歩掛管理、3Dスキャン、入退場管理、電子納品などを含めて20を超えるプロダクトが並んでいます。すべてを一度に使う会社はまれで、自社の困りごとに近いところから足していくのが一般的な入り方です。
現場を動かすための機能
- 施工管理:案件ごとに写真・書類・報告をまとめ、進み具合を関係者で共有する土台の機能
- チャット:案件単位・協力会社単位で連絡をまとめ、電話の言った言わないを減らす
- 図面:最新図面を全員が同じ場所から開き、指摘や依頼を図面上のピンとして残せる
- 黒板:スマホの画面上で電子黒板を作り、撮影と同時に工事名や工種を写真に載せる
- 検査:チェックリストと是正指示をアプリ上で回し、検査の紙とハンコを減らす
- 遠隔臨場:現場の映像を離れた場所から確認し、立会いのための移動を減らす
お金と経営を見るための機能
- 受発注:協力会社への注文書・請書のやり取りを画面上で完結させる
- 請求管理:協力会社からの請求を受け取り、内容の突き合わせと支払処理をまとめる
- 引合粗利管理:問い合わせから受注、実行予算、粗利までを案件ごとに追いかける
- ANDPAD Analytics:案件の状況や利益の推移を集計し、経営の判断材料として見る
ひとつずつは特別に難しい機能ではありません。値打ちが出るのは、これらが同じ案件番号でつながっている点です。写真も図面も注文書も同じ工事にひもづくので、「あの現場の話」を探すときに、探す場所がひとつで済みます。こうした情報の一元化は、建設DXの入口として最もよく選ばれる進め方でもあります。
ANDPADの仕組み ― 情報はどう流れるのか
難しく考えず、一件の工事が始まってから終わるまでの流れに沿って追いかけると、仕組みはすぐにつかめます。
- 1
案件をつくる
受注した工事をひとつの案件として登録します。ここが、その工事に関するすべての情報を入れる箱になります。施主名、住所、工期、担当者を入れておくと、後の書類作成が楽になります。
- 2
関係者を招く
自社の担当者に加え、協力会社の職人や設備業者を案件に招待します。招かれた人は自分が関わる案件だけが見えるため、他の現場の情報が混ざりません。
- 3
現場から記録を入れる
写真を撮る、日報を書く、図面に指摘を残す、といった動きがそのまま記録になります。撮影と同時に案件と工種にひもづくので、後から仕分けする作業が要らなくなります。
- 4
事務所で確認して次を回す
事務所は入ってきた記録を見て、工程を更新し、必要な発注を出します。現場に行かなくても状況がわかるため、確認のための電話や往復が減ります。
- 5
完了して振り返る
引き渡し後は、写真や検査記録がそのまま竣工書類やアフター対応の材料になります。案件ごとの原価と粗利も同じ画面で振り返れます。
肝は、記録が「後からまとめる作業」ではなく「作業そのもの」に変わることです。現場から記録を入れる段階で写真が仕分けされているので、夜に事務所へ戻ってパソコンに向かう時間が、そのぶん要らなくなります。
建設現場での使い方
工事写真の撮影と整理
もっとも導入効果が見えやすいのが写真です。デジカメで撮って事務所のパソコンに取り込み、工種ごとのフォルダに振り分けて、必要な分をエクセルに貼る。この一連の作業が、撮影時にアプリ上で電子黒板を出して撮るだけに置き換わります。撮った瞬間に案件・工種・撮影日がひもづくので、後から「去年のあの現場の配管写真」を探すときも、フォルダを掘る必要がありません。
工程表の共有と日々の連絡
紙で配った工程表は、貼った瞬間から古くなっていきます。ANDPADでは工程をアプリ上に置き、変更をその場で反映して関係者に届けます。「明日の左官はいつ入るのか」を確認する電話が、画面を見れば済む問い合わせに変わります。案件ごとのチャットを使えば、やり取りが工事にひもづいて残るため、担当者が代わったときの引き継ぎも楽になります。
協力会社との受発注と請求
口頭やFAXでの発注は、金額の食い違いや二重請求のもとになります。受発注機能を使うと、注文書の作成から送付、請書の受領までが画面上で完結し、後から「いくらで頼んだか」を全員が同じ記録で確認できます。請求も同じ流れの延長で処理できるため、月末に机の上へ積み上がる紙の束が薄くなります。
検査と是正の指示
社内検査や施主検査では、指摘を写真つきで登録し、直したら同じ場所に完了写真を返す、という往復ができます。指摘表を紙でつくり直す手間が減るうえ、「どの指摘がまだ残っているか」が一覧で見えるので、引き渡し直前の抜けが起きにくくなります。
導入した会社では何が変わったか
アンドパッドが公開している導入事例には、規模の小さい会社の例も含まれています。数字の出どころがはっきりしているものを二つ紹介します。
発注書の作成から送付までにかかっていた1件あたりの作業時間。愛媛県の工務店・株式会社クリエイト伸(従業員20名以下)が受発注機能を導入した後の変化として公開されている
15分 → 3〜5分
ANDPAD導入事例「株式会社クリエイト伸」
同社の事例では、紙の請求書の精査に時間がかかり、二重請求や記載ミスが起きていたこと、口頭発注が多く発注額と請求額が食い違うトラブルがあったことが導入前の課題として挙げられています。導入後は業務の終了時刻が夜9時を過ぎていた状態から6時台になり、協力会社の約8割が受発注機能を使うようになった、と紹介されています。
大規模修繕・外装改修を手がける東洋シポデック株式会社(従業員40名規模)が、設計図書や施工写真の共有をANDPADに移した後の体感値として公開している数字
情報を探す時間が70〜80%減
ANDPAD導入事例「東洋シポデック株式会社」
こちらの事例では、図面や写真が個人のパソコンに保存されていて共有がうまくいかなかったこと、デジカメからの取り込みに手間がかかっていたことが課題でした。導入後は撮影と同時に写真が整理されるようになり、各工程の写真を使って施主に説明できるようになったことで、塗装に関するクレームが発生しなくなったと述べられています。
ここで挙げた数値は、いずれも各社が自社の状況について語ったものです。工種、現場数、もともとの業務のやり方によって効果は変わりますし、体感値と実測値が混ざっている点にも注意が要ります。判断材料としては、数字そのものより「どんな課題がどう解けたか」の筋道のほうが参考になります。
こうした現場単位の効率化は、業界全体の課題ともつながっています。国土交通省は2024年4月に策定した「i-Construction 2.0」で、2040年度までに建設現場の省人化を少なくとも3割、すなわち生産性を1.5倍に高めることを目標として掲げました。人手が増えないことを前提に工事を回す仕組みづくりが、公共の側からも求められている状況です。
料金の考え方
ANDPADの料金は、公式サイトで金額表が公開されていません。記載されているのは、料金体系が初期費用・月額費用・オプション費用の3つで構成されること、初期費用には初期登録作業や担当者へのレクチャーが含まれること、月額費用とオプション費用はプランによって異なり問い合わせが必要なこと、そしてアカウント数による機能制限はないことです。第三者サイトには具体的な金額が載っていることがありますが、条件や時期によって変わるため、見積りは公式に取るのが確実です。
ID数の数え方(自社だけか、協力会社も含むのか)、使う予定のプロダクトの内訳、初期費用に含まれる支援の範囲、契約期間と途中でのプラン変更の可否、保存容量の上限、既存のデータをどこまで移せるか。この6点を先に整理して聞くと、他社サービスと横並びで比べやすくなります。
費用対効果を考えるときは、削れる作業時間を人件費に置き換えてみるのが分かりやすい方法です。たとえば現場担当者3名の残業が月に各10時間減れば、月30時間ぶんの人件費が浮く計算になります。あわせて、紙・印刷・郵送・FAXの実費や、写真整理に使っていた休日出勤も見落とさずに数えてみてください。
メリットと注意点
現場が複数同時に走っていて、状況把握のための電話が多い。工事写真の整理に毎月まとまった時間を使っている。協力会社との発注や請求を紙とFAXでやっている。担当者の頭の中にしか工事の経緯が残っていない。こうした状態にある会社ほど、情報を一か所に集める効果がはっきり出ます。
最初の数か月は、これまでのやり方と新しいやり方が並走します。紙とアプリの二重管理が続くと現場の負担だけが増えるため、「この日からは注文書は画面上のみ」といった切り替え日を決めることが要ります。また、協力会社にも使ってもらう前提の道具なので、相手方への説明とサポートの手間を最初から工数として見込んでおくのが安全です。
- スマホやタブレットの操作に不慣れな職人がいる場合、写真撮影など一つの機能に絞って始めるほうが定着しやすい
- 現場でネットワークがつながりにくい場所では、通信環境の手当てが先に必要になることがある
- 使うプロダクトを増やすほど費用も学習コストも積み上がるので、困りごとの大きい順に足していく
- 運用ルールを決める担当者を社内に置かないと、入力の粒度が人によってばらつき、後で検索できなくなる
- 既存の会計ソフトや基幹システムとの連携が必要な場合は、契約前に対応範囲を確認しておく
導入でつまずかないための進め方
- 1
一番痛い業務をひとつ選ぶ
全部を一度に変えようとすると、ほぼ確実に途中で止まります。写真整理か、発注書か、工程共有か。社内で不満がいちばん大きい業務をひとつだけ選びます。
- 2
今のやり方を書き出す
誰が、いつ、何を使って、どれくらいの時間をかけているのかを紙に書き出します。ここを飛ばすと、導入後に「本当に楽になったのか」を判断できなくなります。
- 3
一現場だけで試す
協力的な担当者がいる現場をひとつ選び、そこだけで使います。うまくいかない部分は、この段階で運用ルールに落とし込みます。
- 4
切り替え日を決めて広げる
試した現場でやり方が固まったら、日付を決めて全現場に広げます。二重管理の期間を短く区切ることが、定着の分かれ目になります。
- 5
三か月後に数字で振り返る
最初に書き出した作業時間と比べます。減っていなければ、道具の問題ではなく運用ルールの問題であることが多いので、そこを直します。
どの業務から手を付けるべきか社内で判断がつかない場合は、業務の棚卸しから相談できる支援先を使うのも手です。AI番頭では、建設業の現場業務を整理したうえで、どの道具をどの順番で入れるかを一緒に決めるサービスをご用意しています。
よくある質問
Q職人がスマホの操作に慣れていなくても使えますか+
写真撮影や工程の閲覧など、日常的に使う部分は画面の指示に沿って進む作りになっています。ただし、慣れていない方に最初から複数の機能を渡すと混乱しがちです。まずは「写真はこのアプリで撮る」だけに絞り、それが当たり前になってから次を足すのが現実的です。導入時には担当者へのレクチャーが用意されているため、その場に現場の中心人物にも入ってもらうと定着が早くなります。
Q協力会社にも料金がかかりますか+
料金は公式に公開されておらず、プランやID数の数え方によって変わるため、協力会社ぶんの扱いは見積りの段階で必ず確認してください。公式サイトには、アカウント数による機能制限はないと記載されています。実務上は、協力会社に使ってもらえるかどうかが効果を左右するので、費用面と説明の手間をセットで考えておくとよいでしょう。
Q他の施工管理サービスやkintoneとは何が違いますか+
NDPADは建設業向けにあらかじめ形が決まっている道具で、工事写真や受発注といった建設特有の流れが最初から用意されています。一方、自社の帳票に合わせて画面を組み立てたい場合は、汎用の業務アプリ基盤のほうが自由度は高くなります。決まった形に自社を合わせて早く始めたいならANDPAD、自社独自の管理項目が多く形から作りたいなら汎用基盤、という比べ方が実態に近いです。
QAIの機能は使えますか+
NDPAD自体は、AIというより現場情報を一か所に集めるための土台です。ただし、写真や日報、発注記録がデータとしてそろっている状態は、後からAIを使ううえで大きな前提条件になります。散らかった紙のままではAIに読ませようがないため、先に情報を整えることが、結果としてAI活用への最短ルートになります。
Q導入を決める前に試せますか+
料金や契約条件と同様、試用の可否や範囲は問い合わせによる個別対応となります。相談する際は、自社の現場数、社員数、協力会社の数、いま困っている業務を先に整理して伝えると、条件に近い提案を受けやすくなります。
関連用語
建設DX
デジタル技術で建設業の働き方そのものを変える取り組み。ANDPADの導入はその具体的な一手にあたります。
詳しく見る →電子黒板
工事写真の黒板を画面上でつくる仕組み。ANDPADで最初に効果が出やすい機能の土台になっています。
詳しく見る →kintone(キントーン)
自社の帳票に合わせて業務アプリを組み立てるクラウドサービス。決まった形か自由な形かで比較検討されます。
詳しく見る →AI-OCR
紙の書類を読み取ってデータに変える技術。紙が残る業務をクラウドへ移すときの橋渡しになります。
詳しく見る →自社の場合はどの業務から始めるのが早いか、費用に見合う効果が出そうかを整理したい方は、お問い合わせからご相談ください。現場の状況をうかがったうえで、無理のない進め方をご提案します。
出典・参考
ANDPAD ニュース「ANDPAD AWARD 2026 授賞式を開催」(2026年6月16日)
https://andpad.jp/news/20260616
出典を開く →ANDPAD「料金について」
https://andpad.jp/help/pricing
出典を開く →ANDPAD導入事例「株式会社クリエイト伸」
https://andpad.jp/cases/create_shin
出典を開く →ANDPAD導入事例「東洋シポデック株式会社」
https://andpad.jp/cases/toshipo
出典を開く →国土交通省 報道発表「『i-Construction 2.0』を策定しました」(2024年4月16日)
https://www.mlit.go.jp/report/press/kanbo08_hh_001085.html
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